酒類販売業免許(酒販免許)の取得を検討されている方で、販売場として使用する建物が未登記(登記簿が存在しない)であるケースは、特に古い建物や相続物件で少なくありません。

通常、酒販免許の申請では、販売場の「登記事項証明書(登記簿謄本)」が必須書類とされています。これは、建物の法的存在と、申請者がその場所を使用する正当な権限(使用権限)を証明する根拠となるからです。

しかし、ご安心ください。結論から申し上げると、未登記の建物であっても、適切な代替書類を準備することで酒類販売業免許を取得することは可能です。

はじめに:「未登記建物」でも酒類販売業免許は諦める必要はありません

本記事では、未登記建物で酒販免許を取得するために、なぜ登記事項証明書が必要なのか、未登記の場合のリスクと、行政書士が推奨する代替書類と具体的な申請のポイントを解説します。


1. 酒販免許申請における「登記」の重要性

1-1. なぜ登記事項証明書が必要なのか?

酒販免許は、「場所」に対して付与される許認可です。税務署は、登記事項証明書の情報を通じて、以下の重要な点を審査します。

  1. 建物の所在と構造の確認: 所在地、種類、構造、床面積などの情報から、販売場が酒税法やその他の関連法令・規制(例:用途地域、構造の適合性)に適合しているかを確認します。
  2. 権利関係の明確化: 所有者の情報が記載されており、申請者がその建物を適法に使用する権限(所有権、賃借権など)を持っているかを確認します。これにより、事業の安定的な継続性を判断します。

登記事項証明書は、これらの情報を公的に証明する最も信頼性の高い書類です。

1-2. 未登記の場合の主なリスク

建物が未登記である場合、酒販免許の申請には以下のリスクが伴います。

  • 存在・権利証明の困難さ: 建物の公的な証明が存在しないため、建物の所在、構造、そして申請者の使用権を証明することが困難になります。
  • 審査の厳格化・長期化: 税務署は代替書類の内容を慎重に審査するため、通常の申請よりも審査が厳しくなり、審査期間が長引く可能性があります。
  • 所有権の曖昧さ: 法的な所有権が不明確な場合、親族間の承諾が必要になったり、相続の問題が絡んだりすることで、書類準備が複雑化します。

2. 未登記建物での酒販免許申請:必要書類と代替書類

未登記建物で酒販免許を申請する際は、登記事項証明書の代替として、建物の存在・所有者・構造を公的に証明できる書類を組み合わせて提出する必要があります。

2-1. 【基本】建物の所有者を証明する代替書類

建物の存在と所有者を証明するために、以下の書類を準備します。

書類名取得先目的と注意点
固定資産課税証明書 or 納税通知書(写)市区町村役場建物の所在地・種類・所有者名が記載されており、所有権を公的に証明する最も有効な書類です。最新年度分を用意します。
建物評価証明書市区町村役場建物の評価額を証明し、建物の存在を裏付けます。
公図(写し)法務局土地と建物の位置関係を明示し、建物の所在を明確にします。
名義人の承諾書名義人(所有者)申請者と所有者が異なる場合(親名義など)は、事業利用の許可を示す承諾書が必須です。

2-2. 【完成済/新築】建物の構造・使用権を証明する代替書類

建物の構造や、申請者が使用する権利を証明するため、登記以外の書類も収集します。

建物状況必要な代替書類目的と注意点
完成済の未登記建物建築確認済証および検査済証(写)建物が建築基準法に適合していることを証明します。建築当時の書類が残っているか確認が必要です。
売買契約書または贈与契約書(写)申請者が建物を取得した経緯と、建物の仕様を証明します。
新築で登記が未完了建築請負契約書または工事完了引渡証明書建物の所在地、種類、構造などの情報を証明します。
建築確認済証および検査済証(写)建物が建築基準法に適合していることを証明します。
賃貸借の場合賃貸借契約書申請者がその建物を賃借していること、賃貸借期間を証明します。

3. 未登記建物での申請をスムーズに進める実務上のポイント

未登記建物で申請を成功させるためには、以下の実務的なポイントが不可欠です。

3-1. 最重要ポイント:税務署への「事前相談」を必ず行う

未登記建物の申請においては、行政書士か、ご自身で行う場合は税務署への事前相談は必須中の必須です。

税務署によって、どの代替書類が有効と判断されるか、また追加でどのような説明資料を要求されるかが異なる場合があるためです。

  • 書類の有効性の確認: 収集した代替書類が、申請する税務署で認められるかを確認します。
  • 個別具体的な指示の取得: 申請者の状況(相続の有無、建物の築年数など)に応じて、不足書類や作成すべき図面について、具体的な指示を仰ぎます。
  • 信頼関係の構築: 事前に状況を説明しておくことで、税務署との間で円滑なコミュニケーションを図り、審査をスムーズに進めることができます。

3-2. 申請書作成の注意点:「正確性と整合性」

登記事項証明書がない場合、申請書に記載する建物の情報は、代替書類に記載されている内容と完全に整合している必要があります。

  • 情報の転記: 所在地、種類、構造、床面積などの情報は、固定資産課税証明書や建築確認済証など、公的な代替書類に基づいて正確に記載します。
  • 事業計画の詳細: 申請者の事業の継続性や健全性を判断するため、事業計画や販売方法に関する詳細な情報を具体的かつ実現可能な内容で記載します。

3-3. 建物図面による「独立性」の立証

未登記であっても、酒類販売場として使用する区画が、居住スペースや他の事業スペースと明確に区分されている(独立性の確保)ことを、提出する図面で正確に立証する必要があります。

  • 建物の間取り図を作成し、販売場として使用する部屋または区画を赤枠で囲み、その面積と用途を明記します。

まとめ:未登記でも諦めずに専門家 YAS行政書士事務所へ相談を

未登記建物であっても、酒類販売業免許の取得は決して不可能ではありません。成功の鍵は、登記事項証明書に代わる適切な公的書類を漏れなく収集し、税務署の指導基準に基づいた図面と事業計画を提出することにあります。

未登記建物の申請は、通常の申請よりも手続きが煩雑で、高度な専門知識が必要とされます。書類の不備による審査の長期化や却下といったリスクを回避するためには、行政書士のサポートが不可欠です。

私たちYAS行政書士事務所(酒類販売業免許申請代行センター)は、未登記や名義違いといった複雑な不動産状況での酒販免許申請を専門としております。代替書類の準備から税務署への事前相談、申請書作成まで、すべてを代行し、貴社のスムーズな免許取得を実現します。

未登記だからと諦めず、まずは専門家にご相談ください。

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