「初期費用を抑えて自宅で酒類のネット販売を始めたい」「空き部屋を活用してワインショップを開業したい」―。
このようなニーズを持つ方々にとって、酒類販売業免許(酒販免許)の取得は必須です。しかし、賃貸物件、親名義の戸建て、あるいは古い建物特有の未登記状態など、自宅の不動産状況が複雑な場合、最初の関門となるのが「販売場の使用権限」を証明するための書類準備です。
この記事では、自宅を販売場とする酒販免許申請の基本を解説するとともに、名義が本人以外の場合や、建物が未登記の場合など、よくあるケース別の具体的な対処法と必要な代替書類を、行政書士である専門家の視点から詳しくまとめます。
ご不明点がございましたら、当事務所にて申請代行いたしますのでご相談ください。
はじめに:自宅でのお酒の販売と最初の壁「使用権限」

1. 自宅でお酒を販売するために必須となる「場所的要件」の基礎
酒類販売業免許を取得するためには、大きく分けて「人的要件」「経営基礎要件」「需給調整要件」「場所的要件」の4つの要件を満たす必要があります。
自宅を販売場とする場合、このうちの「場所的要件」、特に「販売場の使用権限の確保」と「居住部分との区画の明確化」が最重要課題となります。
1-1. 自宅申請における「使用権限」の証明とは
酒販免許は、販売業務を行う特定の場所(販売場)に対して付与されるため、申請者はその場所を排他的・継続的に酒類販売業に使用する正当な権限を持っていることを証明しなければなりません。
| 権限のタイプ | 証明に用いる主な書類例 |
| 所有権(自己名義の不動産) | 建物・土地の登記事項証明書(登記簿謄本) |
| 賃借権(賃貸物件) | 賃貸借契約書(賃貸借期間が明確に記載されているもの) |
| 使用借権(親名義など) | 使用承諾書(所有者から事業利用の許可を得たもの) |
これらの書類が用意できない、または内容が複雑な場合に、代替書類を用いて使用権限を立証する必要があります。
1-2. 自宅申請で共通して必要な基本図面類
自宅申請では、特に居住部分と事業部分を明確に分けるため、以下の図面類が必須です。
| 書類内容 | 目的と注意点 |
| 販売場の敷地図 | 建物全体の配置を示す図面。販売場がどの建物にあるかを明示。 |
| 建物の間取り図(平面図) | 建物全体の部屋の配置を示す図面。販売場として使用する区画を赤枠で明確に囲むことが重要。 |
| 販売場内の設備概要 | デスク、棚、レジ、酒類の保管場所など、事業に必要な設備を図示。 |
2. 【ケース別】自宅の名義が本人以外の場合の対処法
自宅の不動産名義が、申請者本人ではない場合(親、配偶者、兄弟など)、「使用承諾書」を核とした代替書類で申請を行う必要があります。
| 必要な代替書類セット | 内容・備考 |
| ① 建物・土地の登記事項証明書 | 所有者を確認するために必須。法務局で取得。 |
| ② 使用許諾書(承諾書) | 名義人(所有者)から、申請者(使用者)へ酒類販売場として使用することの許可を得た書類。この書類が最も重要です。 |
| ③ 固定資産税の納税通知書コピー | 納付書の名義人と住所を確認。所有者の実在性を示すために利用。最新年度分が望ましい。 |
| ④ 公図(写し) | 土地と建物の位置関係を明示。隣地との境界確認などに利用。 |
【注意】 親族間であっても、口頭での承諾だけでは不十分です。必ず所有者(名義人)の実印が押印された「使用承諾書」を用意し、使用権限を正式に立証する必要があります。
3. 【ケース別】自宅が未登記の場合の対応と立証資料
特に古い建物や、相続で取得した建物に多いのが、建物が法務局に登記されていない「未登記」のケースです。未登記の場合、「登記事項証明書」が存在しないため、別の資料で建物の所有と使用実態を証明しなければなりません。
3-1. 未登記建物の対応に必要な証明資料
未登記の場合、以下の3つのカテゴリーに分けて資料を集め、建物の「所有実態」と「構造・存在」を立証します。
| カテゴリー | 必要な書類例 | 取得先と目的 |
| 所有実態の証明 | 固定資産税の納税通知書 or 建物評価証明書 | 市区町村役場で取得。建物の所在地・名義が記載されており、所有者であることを公的に証明する。 |
| 構造・存在の証明 | 建物図面(手書き可) および 現況写真(外観・室内) | 申請者が作成。建物の面積・間取り・用途、そして販売場の独立した区画を図示する。 |
| 土地との関係の証明 | 公図(建物の位置明示) および 土地の登記事項証明書 | 土地の所有関係と、建物がその土地の上に存在することを確認する。 |
【POINT】 未登記建物では、行政側の確認事項が多くなる傾向にあります。資料に不足があると審査が長期化するため、できるだけ詳しい資料と、明確な販売場の図面を揃えておくことが、スムーズな許可取得の鍵となります。
3-2. 賃貸物件が未登記の場合
賃貸物件が未登記の場合、原則として賃貸借契約書で使用権限を証明しますが、貸主(オーナー)には固定資産税の納税証明書などで建物の所有実態を立証してもらう必要があります。
4. 自宅販売に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 自宅の一部を販売場にしてもいいですか?
はい、可能です。ただし、酒類販売業を行うスペースは、「住居部分と明確に区画されていること」が必須の要件です(場所的要件)。
【具体的な区画の例】
- 独立した一部屋を販売場専用とする。
- 専用の出入口を設ける。
- パーティション(間仕切り)や施錠可能な扉で居住部分と物理的に分離する。
- 専用の棚、デスク、レジスペースを設け、図面上で明確に範囲を示す。
リビングの一画など、区画が曖昧な場所では独立性がないと判断され、不許可になる可能性が高くなります。
Q2. ネット販売(通信販売)の場合も自宅を販売場に使用できますか?
はい、可能です。
「通信販売酒類小売業免許」を取得することで、自宅を酒類の発送拠点・事務所として使用することができます。
この場合も、自宅を販売場とするための「場所的要件」は同様にクリアする必要があります。さらに、申請書類には、取扱予定の酒類、ウェブサイト等での年齢確認方法、商品の保管・発送体制などを詳細に明記することが求められます。
Q3. 賃貸マンション・アパートでも酒販免許は取得できますか?
賃貸借契約書で使用権限は証明できますが、契約書の使用目的が「居住専用」となっている場合は、必ず大家さんや管理会社から「事業利用(酒類販売場としての利用)」の書面による承諾を得る必要があります。この承諾が最も大きなハードルとなります。
まとめ:自宅販売でも専門家のアドバイスで「使用権限」をクリア

自宅でお酒の販売を始めるためには、名義が異なる場合や未登記であっても、代替書類と所有者・貸主の承諾を適切に整えることで、酒類販売業免許の申請は可能です。
特に、「名義が本人以外」の場合や「建物が未登記」の場合は、酒税法上の要求水準を満たす公的な書類を揃える専門的な知識が不可欠です。
当事務所、酒類販売業免許申請代行センターでは、複雑な不動産状況(親名義、未登記、賃貸など)での自宅申請サポート実績が豊富にございます。
「どの書類を誰に書いてもらえばいいのか」「自宅の状況で申請可能か」といったご不安がある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。最初の一歩で適切な書類を準備することが、事業をスムーズにスタートさせるための最短ルートとなります。
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